小さい頃の夢物語。
それは、私には沢山のお兄さんや、お姉さんがいて、いつもみんな仲良さそうに笑っているの。
夢で見るその光景が私は大好きで、いつか私もこんな風になったらいいな、ってずっと思ってた。
でもそんなのは所詮夢。現実にはない優しくて儚い『ユメ』。
有り得ない…でも私はそうは思わない。いつか…いつかきっと…
私の大切な人たちがこの夢から起こしてくれる。その先には私の素敵な未来がある―私は、そう信じてる。
Little*Song
「これより―第68回入学式を始めます。ではまず…」
長い長い入学式の始まりだ。大きくて広い会場のホールは何処となく安心はできなかった。
でも椅子が有り得ないほど高価なものでふかふかとしている。
それにしても気になる…
ふと頭によぎった。さっきの赤髪の男子生徒。結構派手に制服を着崩していたから探せばすぐわかるはず。
薄手のマフラーにピアス、何せあの赤髪。制服のネクタイも緩めていた。
校内で会えば一発で分かるだろう。それにしても何故私の名前を知っていたのだろうか。
名乗ってもいないし名札なんてものも付いていない。
「んじゃ、また後でな!!」
そんな言葉が何回も頭の中でかかっていた。
そんな風に考えていたら周りから黄色い声が飛び始めた。
「キャー!あの人誰っ?凄いかっこいいっ!」
ん?確か今の時間は生徒会メンバーの紹介かな…?……あっ!!
「新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます!」
そんな声がホールいっぱいに響いた。前にはショートヘアーの美少女、黒髪の目つきが鋭い少年、優しい笑顔の白髪の少年、そして…
「さっきの人…だ…」
驚いて声が細く弱々しくなった。さっき話した赤髪の人がいる。
ショートヘアーの美少女が一歩前に出て挨拶を始めた。
「入学おめでとうございますっ!私たち生徒会をはじめ、この学園の生徒全員が貴方たちの入学を心待ちにしていました!私は書記のリナリーです!」
可愛らしい純粋な笑顔で入学生に向かって語りかける少女はリナリーというらしい。紹介を終えると今度は一歩下がった。
黒髪の人が一歩前に出る。
「俺は会長の神田ユウだ。」
無愛想なあいさつとともに女子からの黄色い歓声。美形な黒髪さんは神田先輩…か。神田先輩は一歩下がる。
「僕はアレンと言います。一応企画・運営をやらせてもらってます。まだ一年生なのでこれからよろしくお願いします!」
紳士な態度に甘い笑顔を振りまくのはアレン…君。最後の一人は…
「こんちはっ!俺は会計のラビ!これから短い間だけどよろしくな!」
元気よく最後を締めたのはさっきの赤髪の人…ラビ先輩。
終わると思ってた挨拶はそう簡単には終わらなかった。
「皆さんに言っておきたいことがあります!」
ざわっ。そんな効果音が正しいと言えるくらい声がわき始めた。言いたいことって何だろう…?
「今年度の入学生に俺たちの大切な妹が入学してるんさ!」
「その人は後で生徒会室まで来てください。」
「待ってるからねっ!」
「絶対来いよ。」
半ば最後命令なお知らせ。あの美男美女の妹なのだからとても美人なんだろうなぁ…
それ以前にあの人たちって兄妹だったんだ…知らなかった。
生徒会からのお知らせが終わるとあっという間に入学式は終わった。皆の話題はもちろん…
「ねっね!あの先輩たちの妹ってだれだろうねっ?」
「リナ先輩…あの人の妹ならゼッテェ可愛いよなっ!」
男子、女子ともにその話題のみ。確かにみんなすごく可愛いし、かっこよかった。
一言で言うなら『夢の兄妹』。でも私には関係ないからそのまま家に帰れちゃうんだよね。
そう思って私は校門への道を急いだ。
そんな一人の少女の影を三階の教室から見てる人物がいた。
「み〜っけた!」
そんな言葉を口にして。
急いで帰ろうとしたら誰かに思いっきりぶつかった。
「っ!」
「うわっ!」
思わず声を出してしまった。ぶつかった相手は大丈夫かな…
「…?」
聞き覚えのある声。それもついさっき聞いた…
「えっと…神田先輩…?」
目の前には黒髪の生徒会長、神田ユウがいた。
「……」
「あの…何か用ですか…?」
恐る恐る口を開いて聞いてみた。その態度に神田先輩は一度目を見開いた。
「…お前聞いてないのか?」
驚いた顔でそういう先輩。何のことだろう。
「えっと…何のことですか…?」
「…!知らないのか…。まぁいい、ちょっと付き合え。」
そう言って私の腕を掴んで先輩は歩き始めた。
「えっ…!待って下さいよっ!!」
そう言っても一向に止まらない足。早歩きで先程出た校舎に私は神田先輩と一緒にまた入って行った。
あとがき。
どうでしょう…?長くなりそうだったので途中切り。
この作品書いてて楽しいです。アレンを兄にするかかなり迷いましたが同い年で。
分かりにくい表現が多いので、後日書きなおしたいと思ってます。
2008.11.06 初書き。