ねぇ。なんで毎日泣いてるの?

小さい頃の私は何も知らなかった。ただ、毎日遊んで、当たり前のように家族全員でたわいのない会話をして。
だけど、今なら分かる。そして後悔する。

あぁ、私は何て愚かだったのだろう。あの時にあの人の心を理解してあげられたら、みんなの笑顔は絶えずに幸せな家族として過ごすことが出来たのに。

私は…そんな風にあの人を追い詰めてしまった―自分が大嫌い―


Little*Song


ジリリリリリ。
冷たい朝に響く冷たい目覚ましの音。
その音はとても五月蠅くて、あっという間に私を夢から引きずり出した。
「もう少し…寝たかったな。」
ポツリとそう呟いてベットから身を起こした。大きな窓からは柔らかな太陽の日差しが入ってきた。
その光に目を細め、私は下へと階段を降りて行った。

「おはよう、お父さん、お母さん。」
私は和室のお仏壇に一言そう挨拶をした。
確か旅芸人だったお父さんは私が幼い時に死んじゃった。
お母さんは数年前から行方不明。私はそれからずっと祖父、祖母の所にお世話になってる。
だけど今現在、祖父と祖母は世界旅行中。何処にそんなお金があるのかと思ったけれど祖父と祖母は言わずと知れた大富豪。
私を残して行ったけれど、ひとりで住むのは半ば抵抗がいるくらいの大きな家に私を住まわせてくれている。

今日は…入学式、か。

今日の予定を確認する。確か今日は高校の入学式だ。これから毎日楽しくなるといいなぁ。
そんなことを思っていたらインターホンが鳴った。朝から人の家のインターホンを鳴らすのはあの人しかいない。
私は急いで支度を済ませ、広い広い中庭から飛び出して玄関へ向かった。
案の定、私の当たって欲しくない勘は当たって玄関前にはにっこりと笑ったコムイさんがいた。
「おはようございます…コムイさん…。」
「おはよう!ちゃん!」
元気に挨拶をしてきたのは、桜花学園コムイ校長。
校長なのにいつもリーバー教頭ッて人にに仕事を押し付けてるらしい。でもコムイさんは幼い頃から何かと私の世話を焼いてくれる。
ちゃん!今日は入学式だよね?僕この日を楽しみにしてたんだよ!」
自分のことのように話すコムイさん。その姿はとても子供っぽく何処か懐かしかった。
「ありがとうございますっ!これからもお世話になります!」
「はは、僕も嬉しいよ。」
そう言うとコムイさんはポンポンと私の頭を撫でた。少し髪型は崩れてしまったけれどコムイさんの大きくて優しい手は安心できた。
コムイさんは車で私を迎えに来てくれたらしくて、車を指さして「行こっか。」そう言って私の腕を引っ張った。

車に乗ってからコムイさんと他愛のない話をしていたらいつの間にか学校に着いていた。

「うわぁー!凄い!」
私は思わず歓喜の声を挙げた。目の前には美しい桜、若草色の広い広い芝生の校庭。装飾された校舎。普通の学校とは思えないほどの豪華な造りだった。
「明日にはじっくり校内を案内するからね。これからもよろしく。」
「はいっ!コムイ先生。」
私は期待を胸に入学式の会場に向かった。

「あんなに小さかったのに、あっという間に立派になったんだね。」
コムイはそう呟きながら、小さくなっていく一人の『女の子』の背中を見送った。

入学式はホールで行われるらしいが、此処はどこだろう…?
もしかして早速迷子決定!?コムイさんは行けば分かるって言って何処かに行っちゃったし…どうしよう?
そんな風に慌てていたら横から声がかかった。
「なぁなぁ!」
声がする方へと顔を向けると、1人の背の高い赤髪の男子生徒が立っていた。
「はい?」
「さっきからキョロキョロしてっけど君、新入生?」
「えっ、あっ、はい…。」
「なんか失くしものでもしたんさ?」
「いえ、入学式の開催場所のホールが何処か分からなくて…」
「!…じゃあ、俺がホールまで案内するさっ!」
「いいんですか!?」
「いいって。んじゃ、行くさ!」
「うわぁ!」
私はその男子生徒に腕を引っ張られていった。

「ホールは此処だから。何かあったらまた聞いてさ!」
「ありがとうございます!先輩!」
「!…はは。」
おそらく先輩だろうと思ってそう言ったら笑われてしまった。何か変な事でも言っただろうか。
「あの…」
「あっ、悪ぃ!まだ聞いてないんだな。」
「?」
「んじゃ、また後でな!!」
「あっ!」
親切にしてくれた先輩は何処かに行ってしまった。
それにしてもさっきの対応。何だったのだろう。私の名前も知ってたし…。

「これより入学式を始めます。生徒の皆さん着席してください。」

「大変っ!」
私は急いで自分の席へと向かった。




あとがき
プロット無の連載。始まっちゃいましたね★←
出てきた男子生徒は分かる通りの方です。笑った原因は次回すぐに分かります(笑)
このお話は一つ一つ短めに書いていこうかなと思います。
次回からはティーンズ全員登場します!

2008.10.26 初書き。