私の家に一通の手紙が届いた。それは海外留学に行っている弟の懐かしい文字で書かれた手紙だった。
『お久しぶりです、姉さん。やっと海外留学を終えて日本に帰れそうです。
早くても一週間後には家に帰れると思います。姉さんに会うのを楽しみに帰るので待っててくださいね。』
急いで書いてたのか短い内容だったけど弟のアレンが帰ってきてくれると分かってとても嬉しい。
私は一言「早く帰ってきてね、アレン。」そう言って夕食を作りにキッチンに向かった。
幸せのかたち
あの手紙が届いてから早一週間。私は今日の日を楽しみにしていた。アレンが帰ってきてくれるのだ。
高校一年の時に学園の代表としてアレンは英国へと行った。
両親は私たちが中学生の時から海外で仕事をしていて、アレンが留学する前は二人で毎日笑いあってとても楽しい毎日を送っていた。
でもそれからアレンに留学の誘いが来て、最初はアレンは私を気遣って断ってくれた。でも私は言った。
『行ってらっしゃい。』
そう私が言ったらアレンは少し泣きそうな顔をしていた。だけどすぐにいつもの優しい笑顔に戻って「行ってきます」って言って家を出て行った。
アレンが留学の間は、ほぼ毎日泣いていたと思う。
いつも隣にいたはずの人がいない。笑いかけてくれる大切な人がいない。
前までそんなことばかり考えていたことを思い出し、自然と涙がこぼれてきた。
でもその涙は誰かの手によって優しく拭いとられた。後ろを振り向くとそこには私よりも背が高くなった大好きな弟の姿があった。
「ア…レン!」
アレンの姿を見つけ、何かの衝動に駆られるように沢山の涙が溢れてきた。
「ただいま。姉さん。」
そう言いながら上から私を抱きしめたアレン。ニコッと笑った優しい笑顔は一年前と変わらない。何処か無邪気な私の大好きな笑顔だった。
「おかえり…!おかえりっ!」
「はいっ…!ただいま、姉さんっ!」
ぎゅぅ、と抱きしめる力を強めたアレンの瞳からは一雫の涙が落ちていた。私と同じこと考えてくれてたのかな、なんて考えると自然と嬉しさが胸の内をいっぱいにする。
「はは。」
いきなりアレンが笑うから少し驚いた。どうしたのだろう。
「どうしたの、アレン?」
「いや、僕って幸せ者だなぁって思って。」
いきなりのアレンの言葉に私は首をかしげた。
「だって、僕は家に帰ったらこんなにも大好きな姉さんに一番に逢えて、僕のために涙を流してくれて。なんだかそれが嬉しくって。」
「え?」
「この一年、僕は姉さんの姿さえ見れないほど遠い所にいたのに、今は抱き締められる位近くにいる事。それだけでも僕は凄く幸せ者だと思ったんです。」
アレンは照れてる様子もなく素直な気持ちでそう言っていた。私は思わずくすっ、と笑ってしまった。
「ふふ。」
「?どうしたんですか、姉さん?」
そう聞いてくるアレンは抱きしめた状態で上から顔を覗き込んできた。
「アレンが幸せ者だっていうのなら私はもっと幸せ者だよ。」
「?なんでですか?」
「だって私は、アレンと一緒にこれからまた一緒に暮らせるんだから!それ以上に嬉しいことなんて無いよ。」
「姉さん…。」
「帰ってきてくれてありがとう、アレン。」
「…待っててくれてありがとう、姉さん。」
優しく笑いかけてくれるアレン。その笑顔の先には私。普通な毎日のはずだけれど、私はすごく幸せ。
大切な人との毎日。これからの毎日を大事に大事に過ごしていきたい―そう強く思う。
だからさ、アレン。これから何があっても二人で一緒に歩いていこうね。私たちそれぞれの大切な未来を掴むために。
あとがき。
アレンの弟夢を一度書いてみたくて挑戦してみました!
なんだか恋人らしくなってしまったので最後に『それぞれ』という言葉を使って終わらせてみました。
私としても思い入れが深い作品なので気に入っていただけると嬉しいです。いっその事シリーズ化してしまいたい…!
改めて拍手ありがとうございました!
2008.10.25 初書き。